【一般漫画】売野機子『MAMA』 24年組の呪い
売野機子はどっかの書評で花の24年組の再来だと言われてました。
それまでヴィレヴァンで見かけたりして気になってた漫画家ではあったもののなんとなく手にする機会がなく読んでませんでしたが、先日ようやく「薔薇だって書けるよ」を読みました。
その中でオリジン・オブ・マイ・ラブという作品がすごく気に入って、短い話の中での魅せ方がすごくいいなーと。
で、他のも読んでみようと思って検索したら、長編描いてる。しかも、寄宿舎もの。
寄宿舎とくれば、トーマの心臓ですよ。
私の漫画体験においてトーマの心臓は、それを読んだ時の感動を超えることは今後の人生において訪れないんじゃないかと思うような、神的作品です。
だから、そういう私がMAMAを読むと、素で読めなくて困りました。
設定は寄宿舎、少年、キリスト教思想が濃い、とちょっと似ている部分はあるにしろ、売野さんが萩尾さんを模倣しているとも思わない。
でも読んでいるとどーーーしてもトーマの心臓が頭に浮かんできちゃうんです。
私の中で24年組を超えるような少女漫画家はなぜ現れないのかと思っていたのですが、私が越えられないと思っているからこそなんですよね。
漫画は個々に独立した作品で、どれがどれより優れているとか比べる必要はないんです。
それぞれに愉しめばいい。
でも、題材や絵面が似ているとどうしても比較してしまうんです。
だから、MAMAを読んでいる間、終始トーマの心臓が頭をよぎってあまり世界観に入り込めませんでした。
面白いか、面白くないで言ったら間違いなく面白い作品なんですが。
宗教や、死、という人間の根源的なテーマを扱っているのでその受け取り方も難しいというか。
トーマの心臓ではなんの疑いもなくストンと落ちてきたものが、MAMAではどこか引っかかる。
これはこれと分けて考えるべきことをごっちゃにしてしまうからダメなんですよね。でもこれはもう呪いみたいなもので…。
トーマの心臓を読む前なら純粋に物語を読めたんですが、もう読んでしまっているのでそれは無理な話です。
何回も読んで何かが降りてくる瞬間があれば(本を読んでいるとたまにこういう時が訪れます)思うことも違ってくるだろうと思います。
結局、なんというか十分楽しめる話なのに、雑念が多いせいで期待した以上にたのしめなかったのかなんだか悔しいなーという感想です。