のの子のつぶやき部屋

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【BL】ヨネダコウ『囀る鳥は羽ばたかない』5巻感想 矢代が自分の中に見たものとは?

 

囀る鳥は羽ばたかない(5) (H&C Comics ihr HertZシリーズ)

囀る鳥は羽ばたかない(5) (H&C Comics ihr HertZシリーズ)

 

 

囀る鳥は羽ばたかない5巻発売おめでとうございます!!

ブログは絶賛放置状態ですがこれだけは更新しなきゃ…と思いまして……。

4巻発売後に雑誌も購読しようか迷ったんですが、4巻終わり直後の23話を読んで「やっぱり単行本にしよう!!」と雑誌はずっと読まずにいました。
自分が細かすぎる質だからなのか、雑誌で読むのと単行本で読むのでは全然感想が違ってきてしまい、初見単行本で一気に読む!って感じじゃないと私はダメみたいでして…。

ヨネダさんの漫画は実写的だなと思うんだけど、私の中では連続ドラマじゃなくて映画みたいな感じで捕らえていて。連載は映画を一時停止してるみたいな感じなので続きが気になって毎回耐えられないなって。

というわけで、待ちました。


そしてついに!!!5巻発売!!!!


前置きはこれくらいにして、以下感想です。毎度のことですが今回の安定のネタバレ&必要以上の深読みなので未読の方は十分にご注意ください。

 

 


5巻はあとがきでもあるようにターニングポイントになる巻だと思う。

それは矢代と百目鬼の関係において。

 

矢代と百目鬼が!!!!ついに!!!!!!!(白目)!!!!!!!!!!

5巻読む前にチラシ抜こうと思ってぺらっとめくったらちょうどその場面がバッ!と視界に飛び込んできて、一瞬固まる(セルフネタバレ)

23話を読んだ時点で、これは最後までしない感じかなと勝手に思い込んでいたので、もうびっくりどころの話じゃありません。

しかし。そうと分かれば一刻も早く読みたい!!!

 


5巻は矢代と百目鬼のおセックス(……!)の一連の流れで全体の約半分を占めるのでほぼコレがメインと言ってもいいと思う。
読む人は矢代ーーー(;_;)百目鬼ーーーーー(;_;)とそれだけで頭の中がいっぱいになってしまってこの後ちょっといい感じに活躍する竜崎が忘れられてそうで可哀想になるよね。

 

まあ、竜崎いじりはほどほどにしておいて。


冒頭から続く二人のやりとりの雄弁さに驚く。
エロシーンにこんなに意味を求めて読んだのは多分初めてではないだろうか……。


矢代と百目鬼が体を繋げたことは当然だけどすごく意味があると思う。
なんだけど、どんな意味があったかというと実はまだよくわからないというのが正直な感想で。


百目鬼については彼なりの目的と意志があっての行動なのでそこまで複雑ではないように思う。
百目鬼は、ある意味で賭けに出たんだけど。
賭けっていうほど計算してそうしたかっていうとただただ必至だったからああするしか選択肢がなかったということでもあるんだけど。
そして、その賭けには……百目鬼的には負けちゃったのかな。
長期的に見たら、そうじゃないと思うけど結局矢代は百目鬼を置いてひとり出ていってしまう。


矢代の傍にいたくて、矢代の中にある「何か」を信じて、その「何か」に懸けて矢代と自分を繋ぎ合わせたくて出た行動だけども、矢代がどう思ったかは置いといて百目鬼の思惑どおりにはならなかった。
うーん。まだまだ修行が足りんということなのかな……。
可愛い子には旅をさせよってことわざがありますが。
結果矢代が出て行っちゃったから、旅ではないんだけど、百目鬼はもっと成長しないと矢代を受け止めることはできないのかなって。そんな気もする。
なんたってまだまだ伸びしろがあるからね!!うん!!
それに、矢代はやっぱり百目鬼のことがずっとかわいくて仕方がないんだと思う。そう思っているからこそ距離を置いたんじゃないかと。
けど、百目鬼にも誰にも矢代の心のうちはわからないので、百目鬼はただ置いて行かれたという事実だけが残る。

そう思うと「あの人を繋ぎ止めたかったんだ」というモノローグがなんか不穏……。

そのまま読めば自分に繋ぎ止めたかったと読めるけども、もっと飛躍した解釈もできるので……。

 


そして、矢代の方の心境はというと。
巻の前半はほぼ矢代視点で進んでいくんだけども。
わからない。
わからないねーこのお人は……。

人間の心の動きはそんな単純じゃないよねって、思う。ほんとうに。


自分なりに場面場面で考えては見たんだけど、未だにしっくりとはこないなーと。

単行本とファンブックとで情報量が多すぎてな……。


5巻の矢代のあれこれの前に、ファンブックで得た情報とか整理してみた。

それは「矢代のいう言葉は本心なのか」どうかということ。
つまり、嘘をついてるのかそうじゃないのか。
いつ嘘をついていて、いつ本当のことをいっているのか。

ちょっと前のヨネダさんのTwitterでも百目鬼の妹を見たときの矢代の心境について核心に近いようなことを呟いていて、もうどえらいびっくりしたんだけど。
ファンブックでも初期の矢代の言動について書かれているところがあって、

 

「自慢じゃないが、俺は俺のことが好きだ」の矢代は、意外と本当のことを言っているようで嘘を言っているんですよね。「人を羨んだことはない。ただの一度も」ここは描いてないけど、妹のことに引っ掛けてて。この頃から百目鬼のことをいいと思っていたから。こいつに思われている人間がちょっと羨ましいって。割と最初の頃は、言うこととやることが正反対っていう色が強かったですよね。今は段々正反対じゃなくなったって、一致してきていることで矢代自身が崩れてきてて。
――追い詰められてる。(ファンブックP118)


………こんなに前から矢代って百目鬼のこと好きだったんだなー(じんわり)


そして、Twitterでの呟きがこちら。

 

 

切ない……。

矢代のとって百目鬼への関心を深めるきっかけになったのが百目鬼の妹だったってことだけども。
妹は百目鬼が救い出した。
内面的な救いは別にしといて、物理的に加害者をブチのめしてその状況からは救い出した。それは確かなこと。


でも矢代にはずっとずーーーっとそんな人はいなかった。
一方的に好意を向けられることはあったかもしれないけれど、矢代にとってのセックスが過去の自分を受け入れ続けるための反復行為なのだとしたら、その相手は擬似的加害者にすぎない。だから暴力的なセックスを求めても相手を蔑み嫌悪する。

矢代が百目鬼を初めて認識したのは一話で矢代が縛られてセックスしてるところでだった。
傍から見れば一方的に暴力を受けているようにしか見えない行為。
そこで、矢代が無理強いされてると勘違いした百目鬼が止めに入る。
擬似的強姦を止めてくれた人。それが百目鬼

読み返すとこの出会いも意味深いような気がする。

 


矢代は本当の心の深層の奥の奥では「救われたい」と思っているのか。
自分の境遇を誰のせいにもしてこなかった矢代は「誰かのせい」にしたいのか。
そしてそう思う自分を見せてもいい誰かを求めているのか。

 

矢代が受けてきた心の傷は矢代が色々なことを諦めて麻痺させてしまったことで、傷と認識されることもなく、かといって矢代のなかから消え去るわけでもなくずっと心の奥で凝っていた。

前の感想で矢代が自分のことが好きだと言うのも、誰のせいにもしないのもそれが矢代プライドだからということを書いたんだけど。

今思うと、それはちょっと違うのかもしれない。

確かに弱い自分を認めることは矜持が許さないということはあるんだと思う。
そういう人だから部下がついてくるし、三角さんにも気に入られ、百目鬼も惚れた。

けど、それはずっと意識しないでやってきたことだったんだと思う。
自分はそういう人間なんだって思い込んでいた。
ネグレクトも性的暴力も自分の加虐性も。意識の俎上にあげたことはなかった。
そうすることで無意識に平静を保っていた。でも一度死にかけて、歪みの結果ではなく根源的なものを自分の中に見つけてしまった。
どうして自分はここまで歪んでしまったのか。
それは一体誰のせいなのか。


矢代の過去が浮上してくるのと同時に、百目鬼への想いも同時進行で意識の端に現れるようになる。
これは多分セットなんだと思う。

影山を好きになった時、矢代はそれを自分の中の「歪み」だといった。
異常な自分が普通に人を好きになることが歪んている、と。

過去の出来事から性的不能になった百目鬼のことも影山と重ねているからだと思っていた矢代。
でも、そうではなかったということが5巻でわかる。


4巻の終わりで「セックスするか」と矢代は百目鬼に言う。
言った時点で矢代は自分が百目鬼のことをどう認識しているのか自覚がないから、いつもの自分だったらこういうよな、という流れで誘ったという風に見える。
実際にセックスした後自分がどうなるかわかってない。
自分の感情もこの時には理解してないから。

そして、結果からいうと。

矢代は自分の中の本当の「歪み」と百目鬼へ向ける本当の「感情」を同時に自覚した。
ということなんじゃないかと。
今のところ私はそう思います。

最中のシーンについてあれこれ分析するのは野暮なので、ここではあんまり書きません。
いやいやするのとか真っ赤になって恥ずかしがってるのとか、くっそ萌えたってことはとちあえず書いときます。

個人的に、うわーーーーって来たのは、

百目鬼が矢代が寝てるときに何度か触ったと矢代に伝えるところで、4話の答えみたいな場面が描かれてて。
改めて4話を読み返すと、もう矢代はこのときにだいぶ百目鬼のことが好きだったんだなって。
人生で一度だけ好きになった人が影山だと百目鬼にバレて、でもそれを百目鬼にはっきりとは知られたくないと思った矢代。

寝てる百目鬼の耳元にキスした矢代。
矢代も百目鬼と同じことしてたんだね。

そんときはなんとも思わず、「つい」キスしてしまったのかもしれないけど、なんで「つい」それをしてしまったのか、ようやくわかったということ。

好きな人と一度も寝たことがなかった矢代が、初めて好きな人としたセックス。
それは自分が痛めつけられて喜ぶ性質なんだと、繰り返し反復してきたセックスではない。
だから、ついに本当のことが見えてしまった。
本当に自分は与えられる痛みを喜んでいたのか。
普通の恋心は「歪み」だと思うのが正常な自分なのか。

自分の中の真実が見えた矢代の目から涙が流れて、そして暗転。

次に目が覚めたときには、動かないかもしれないと言われた右手が少しだけ動くようになっていた。
そして、その手で顔を覆う矢代。
まるで仮面を被るような動作で。
そして、顔をあげた矢代の表情は……。

あんまりいい顔とは言えない感じ。


元の自分に戻ったようでもあるし、また嘘をついてる顔のようにも見える。

ここで表面上は慌てたり、取り乱したりしないのは、矢代がいい年の大人だからなのか、見えたものがあまりに根深すぎたからなのか。

あとのシーンで百目鬼の回想の中で泣いた直後に矢代は、

「見るな」

という。そして、

「これ以上俺を――」

と続ける。

これは、「これ以上俺を見るな」ではなく、「これ以上俺を」のあとに続く言葉があるように読める。

色々考えたんだけど。

これ以上俺を――するな、と続くのが自然な気がする。いろんなパターンがあるとは思うんだけど。
見られることによって自分の中に沸き起こる感情ってなにかなって。自分の中にあって見られることによって暴露されて嫌な感情ってなんなのか。
自分を見られたくないって思うのは明らかに負の感情から来るものなので、矢代が顔を覆ったあとあの表情になったのはそういうことなのかなーと思った。
私の中でこれかなーと思うワードはあるんだけど、あまりに個人的な感覚に思えたのでそれはここには書かないでおこうかなと。

 

そして、百目鬼を置いて出ていった後に影山にそれを告げたときに言われたこと。
影山にそれを突き付きられて影山への想いも断ち切れたのかな……。
影山に対するときだけはその感情も表情もちょっとだけ素直になりわかりやすくなる矢代だから。
他の誰でもない、影山にそれを言われたことでついに認めざるを得なかったっていうか。
ようやく認めたことを影山がタイミング良く(悪く?)被せてきた。

この時の矢代の顔は本当に素が出てるなって思う。
そしてマジで影山は間の悪い奴だなって!!
これはダメな方の天然じゃないだろうかw こんな調子で久我は影山とずっとやっていけるのかと心配になる。

そして、百目鬼のことを生まれたばかりの雛鳥に例えて、親の刷り込みで着いてきただけだと言う矢代。その表情は見えない。

 

そして、続いて今回美味しかった竜崎!
個人的にぐっと株があがった。

竜崎の乳首好きがただのプレイではなかったことに衝撃を受けたのは私だけではないはず。
そんな伏線の張り方ある!?

4巻の感想でこんなことを書いてたのだけども。

 

 竜崎は竜崎なりに矢代を憎からず思っているんだけど、致命的なのが、竜崎にとっての矢代は最初の印象からなのか「守るべき」「女」という固定観念に縛られているところだと思う。竜崎は根っからの「男」で、同性愛ということを多分全く理解できないだろうし、どう転んでもヘテロなので、矢代と乳繰り合う関係になっても、抱く抱かれるというパワーバランスが基本になる。竜崎にとって抱いた人間は自分の「女」で「守るべき」存在に自動的にカテゴライズされる。男気があって大変結構だけども、こういう思考なので矢代には全く相手にされない。

 抱いても抱かれても上にも下にもならないし、ましてや矢代は精神的にも、もちろん肉体的にも女じゃない。竜崎に守ってもらうようなか弱い人間でもない。

 竜崎は「あんなのがヤクザに向いてるわけねえだろうが お前らの目はどこについてやがんだ」と言うが、むしろフィルターがかかっているのは竜崎の方だ。

 

 

今回ようやくそのフィルターが取っ払われた竜崎。

結局、矢代を守るために体を張ったってことを矢代には言わない竜崎。
わざわざ言うのも恥ずかしいし、言うことでもないんだろう。
そういうところが男だなーと思う。
矢代もなんでか知らないけど、竜崎に関してはちょっと鈍いところがあってそれが可愛いと思う。
道が違えば本当にいい関係になれたと思う二人。
竜崎が矢代のことを色眼鏡でみたりせずに、早く今の心境に至っていれば竜崎が百目鬼のような存在になれたのかもしれない。
矢代のことを先入観や偏見をもって相対しないっていうのは難しいと思う。百目鬼と出会う前でも本当の素の矢代を知ることが、見ることができる人がいれば矢代も心を許したんじゃないかな。
でも、その目を持った人は矢代の前には現れることはなかった。


審美眼というけど。
百目鬼は素直な分いろんなことがまっすぐに曇り無くみえるんだろう。
そういう人じゃないと矢代の内面は窺い知ることができない。

ましてや、竜崎は「守ってやりたい」と思っていたけどもそれはとても自分本位な感情で。全然矢代のことが見えてなかったから思ったことでもあるということ。それがちょっと切ないなと思う。


そして、最後の平田過去編。
ファンブックのヨネダさんのコメントにちょっと笑ったけど、ホントこいつ……!!!!!
真実がすべて明かされたときには死んだ方がマシだと思う責め苦を受けて欲しいと思う。
このクズ野郎!!!

 


最後に5巻の細かい萌えポイントを
・23話の表紙の高校生矢代と大人百目鬼がたまらん
・最中とにかくキスしたい百目鬼
・途中思い浮かべた車中での百目鬼の顔。前に、矢代が百目鬼に「ヤりたくてしょうがねーって顔すんのちょっと見てみてーな」って言ってたけど、もしかしたらこれがそうなのかもしれないね。
・全体的に、体が正直すぎる矢代。さすが淫乱。
・甘栗コンビの存在感。こいつら好きだわ。
・一緒にいた部下はどうしたと聞かれたときの矢代の顔。久々に頭っぽい顔してる。お仕事モードカッコイイ。
・平田を刺したときの竜崎。挑発されるけど、男が男に惚れるかと全否定。本当のところは多分自分でももうわかってるんだけど、竜崎の頑なさがいいなーと思う。わかってるけど、冗談じゃねえっていって感情に振り回されずに自分を貫くのがある意味大人だなーとも思う。
・かと思えば百目鬼のTシャツに嫉妬する竜崎。竜崎は矢代に色々理想を見すぎではないかと。
・そして最後。雛鳥百目鬼百目鬼…お前犬じゃなくて…雛鳥だったのか…。

 


というわけで、以上5巻の感想です。
次はまた一年後かー……。

 

 

 

 

囀る鳥は羽ばたかない(5) (H&C Comics ihr HertZシリーズ)