のの子のつぶやき部屋

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【BL】ヨネダコウ『囀る鳥は羽ばたかない』6巻感想 抱えきれなくなった矛盾

 

囀る鳥は羽ばたかない(6) (H&C Comics ihr HertZシリーズ)

囀る鳥は羽ばたかない(6) (H&C Comics ihr HertZシリーズ)

 

 

 5巻発売から約1年半。そして感想記事も1年半ぶり。自分でもびっくりだよ……。

 

 めちゃくちゃ今更ですが、5巻発売のすぐあと。2017年12月17日。ヨネダ先生のサイン会に行ったりしておりました。

 ヨネダ先生を直接拝見できた貴重な機会でした。

 

 先生は小柄でほっそりされていて、大変お美しい方でした。

 サインしていただいている間言葉を交わす時間もあったのですが、その時私はなぜかその時まで全く質問しようとは考えてもいなかった竜崎のことを質問していて(竜崎好きだけどもっと他に聞くことあるだろ)先生も(え?竜崎??)みたいな感じになっていて今思い出してもなぜ竜崎?と思うのですが……。(ごめんね竜崎)

 

質問自体は

「新刊読んで、竜崎がかわいい!と思ったんですが先生は竜崎のことかわいいと思いますか?」

 という謎な質問で、先生の後ろにいた出版社の方も「え?竜崎ってかわいい??」みたいな感じになって私の心はもう(ふぁーーーーーーーーーーーーーー)って感じだったんだけど、その後先生がちょっと考えてから

「かわいいというかかわいそうだなーとは思う」

「ずっと思ってたのに報われなくて」

「そういうかわいいはあると思います」

 って答えてくださって(ひゃーーーめちゃいいこと聞けたーーーー)と思ったと同時に(え……竜崎…哀れすぎ……)とも思った。

 

 そんなこんなでサイン会はよい思い出です。

 あと、コミコミのコラボカフェいって矢代と百目鬼のレプリカ免許証をゲットしてきたりと珍しくアクティブにオタクをエンジョイしていました。

 

 そしてそんな出来事から早1年半!時が過ぎるのが早すぎる!!

 6巻発売!!

 しかも、元号が変わったその日に発売とはなんとめでたい!

 そしてそしてそして、つい先ごろにはまーーーーーさかの囀るアニメ化決定!!

 BLUE LYNXの発表が出た時、真っ先に「囀るは無理だよなー」って思いました。だって無理じゃん!!

 ですが……無理ではなかったようです。すごい……すごい。

 果たして、現在私の住むど田舎で劇場公開してくれるかは疑問だし、なによりもし劇場で見るにしても、劇場に響き渡るであろう矢代の喘ぎ声に私の共感性羞恥は耐えられるだろうかという個人的な心配もありますが、とにかく嬉しいことに変わりはありません。

 動く矢代と揺れる百目鬼の雄っぱい。楽しみですね(^^)

 

 

 というわけで、前置きが長くなりましたが、以下6巻感想です。

 

 毎回書いておりますが、私の感想はこと、この作品においてはとくに自分勝手に深読みしておりますので、解釈違いやその他の不都合もあったりなかったりするかもしれません。

 特に、巻数が進むにつれ明かされていくキャラの内面など、ヨネダ先生は言葉だけではなく「漫画」という媒体をフルにつかって表現されていて、あえて言葉にせずに表現として完成されているものをこうして『感想』と評して無理やりに言葉に置き換えてしまうのはとても野暮だよなーと思っていたりもします。

 どれだけの方がこの文章を読んでくれてるのかは定かではありませんし、そこまで影響力のある文章ではないとも思いますが、私の感想はどうしてもそういう風な書き方になってしまうので……。

 そんなに言うなら書くな!って感じですが、読んでしまったからには言いたい……それも性なのです。

 だって面白いんだもん!!!

 それに矢代という人間が複雑すぎるのがいけないんだーーーー!!!

 

 というわけで、以下の感想はいち木っ端腐女子のたわごとなので、独り言だと思ってどうか読んでください。

 

 もちろんネタバレなので、未読の方はご注意ください。

 

 

 

 

 

 

 さて。

 6巻の表面的なところでの一番大きな出来事はもちろん抗争の決着だろう。

 平田、ついに詰み。

 この時を…みんな待っていた!

 平田は結局最後まで報われず。まあ、報われたらそれはそれで嫌だけど。三角さんも全部ではないものの、薄々平田のやったことには気がついていたと考えると胸中はどんなものだったんだろう。

 平田を疑ってはいても、簡単に動ける状況にも立場にもなかったのは確かだけど、それを踏まえても三角さんは完璧に私情と仕事を理性で区別できる人って感じがする。頭の回転早すぎて、感情より結論が出ちゃうタイプっていうか。

 あくまで表面上はだけど。けど、内心はどうであれ外面を完璧に取り繕えるのがよくも悪くも大人だよね。

 優しい人だけど、その優しさの根源がなんなのか気になるところではある。

 『長年探してた女に会える』と言って会ったときのやりとり。

 女という生き物に対する、期待と諦め。

 三角さんは女に限らずそういう期待にたくさん裏切られてきた人だと思う。けど、三角さん自身はそれを裏切りとは思っていないのかも。それが三角さんの情だし、そういう人だから人を惹きつける。

 けど、実際平田が拗らせたのって女だけでなく、男にも三角さんがモテすぎるからってものあるよね。大切なものにかける三角さんの情を間近でみているから「自分にも」と思ってしまう。三角さん自身はそういうのに鈍感だから、尽くす人が集まるのかな。

 平田も愛に飢えた人だったんだろう。

 平田に残った最後の良心はトモだったのかな。服役中にトモからの手紙(だよね?)を読めなかったっていうのは、まあそういうことだよね。トモのことを考えれば、黒羽根さん殺した後でもまだ平田改心IFルートもあり得たけど、手紙は読まれることなかったということで……。

 

 本当のところ平田が三角さんに求めたものは一体なんだったのか。

『嫉妬』か『同族嫌悪』かっていうのは矢代が挑発するために言ったことだけど、どっちかに当てはまるのかと考えると……うーん。やっぱりどっちでもないかなっていう気はする。矢代はそういう風にいえば確実に平田が怒るだろうってわかってるからああいう言い方したけど。

 「ホモ」が嫌いかっていうよりは、やっぱり矢代が嫌い。

 肉体的なものより、精神的なところっていうか。

 三角さんに対してはもはや拗らせすぎて結構ギリギリなところだけど、三角さんって平田に限った話でなく男が惚れる男っていうか。単純な憧れは始まりだったはず……だよね。

 ずっと矢代に関しては嫌っていても評価が上がることも、下がることもなかった平田(むしろ金を稼いでくる矢代を認めた瞬間もあるのかもしれない)が矢代を殺すことを考えるまでに至ったのは何故なのかっていえば、三角さんが自分をまるっきり『無視』して矢代を跡目にしようとしてるから。

 

 

 三角さんに拾われた当初。とりあえず側に置いて育ててくれたけど、自分にはさほどの興味がないように見える三角さん。一番可愛がっている長男(実際は舎弟だけど)がいて、関係はこの上なく良好。そこに自分の入る余地がない。

 とにもかくにもそのポジションが欲しい平田。三角さんに可愛がって貰えるそのポジションが羨ましくって仕方ない。それを簡単に得る方法は、そこを力づくで『空ける』こと。短絡的だけど、まあ効率的でもあるとは思う。後先を考えなければだけど……。

 そうやって若い頃に自分の手で苦労して手に入れた一番の息子のポジションをポッと出のビッチな孫娘に取られそうになっているのが現在というわけで。

 すでに親の目は自分に向いていないことに気がついて、また前と同じ方法でそのポジションを奪うことを決める。

 黒羽根のときは、まあ若いころの勢いでやったことでもあると思うけど、懲りずに年食ってもまた同じ方法っていうのが、バカだなーと思う。

 とはいえ今回は時間がない。

 でも、今回が初めてのことならうまく行った可能性もなくはないかもしれないけど、平田にとっても、三角さんにとっても2度めのことだからね。そう上手くはいかない。相手が悪かったっていうのもあるし。

 

 平田の『自分がそうだから他人だってそうに違いない』って思い込みは、責任逃れの言い訳のようだけど平田自身は本当にそう思ってるんだろう。

 そこで、同じ境遇にあってもそんなことを思わない「強い」人間がいると認めてしまえば自分の「弱さ」を自覚さぜるを得なくなる。

 詳しくは語ってないけど、幸せな生い立ちでないことは確かだろうし。

 自分は誰かにはなれないし、誰かは自分ではないっていう境界に最後まで気がつけなかった。だから、何故?ばかりが増えていく。理不尽なことばかりだろう。

 自分と他人を区別する境界をきちんと分けることができるということ。それを世間は大人と呼ぶんだと思う。

 そういう意味では、平田はある意味で境界をずっと彷徨ってる子供のままだったのかな、とも思ったり。

 

 人に認められたくて頑張るっていうのも、普通に考えればいい動機だと思う。けれど、そこに固執するとその人に認められない限り自分がやってきたことを自分でもずっと評価できないって事態に陥ってしまう。

 自分で自分を評価して、正確に判断したうえで現状を認めるのは、いうのは簡単だけど実際は難しいことだとは思う。上昇志向の強いタイプは特に。

 まして、親に認められたい子の思いは切実だ。(平田は子分じゃないけど)

 

 

 そう思うと平田はずっとわかりにくい反抗期だったのかも……。構ってほしくて、見てほしくて、褒めてほしいけど口には出せなくて影で非行に走る息子。

 うーーーーーーーーーん。平田みたいな息子はいやだなー……。

 改めてコミックスの人物紹見てみて『平田(48)』に思わず笑っちゃったよ。48歳であれはちょっと……。

 

 

 愛されたことがない人間だから、愛を受ける方法を知らない。ついてきてくれた部下もいたのに、結局三角さんしか視界になく、それに拘り続けた結果の自滅。

 哀れな人ではあったけど、やっぱり同情はできないなー。

 終わってみれば、愛すべきクソ野郎であった。

 

 

 その一方で。

 平田と同様、愛を受ける方法は知らない(そもそも欲してもいない)のになぜか周りから愛されまくるのが矢代である。

 ほんと上からも下からも慕われて、そしてそれと同じくらいかそれ以上に人から嫌われたり、憎まれたりする難儀な人でもある。

 

 6巻では、ホント矢代について言いたいことがありすぎてもうどうしようもない……

 

 そして!!!

 百目鬼!!!!

 お前な!!!お前ーーーーーーーー!!!お前だよ!!!お前!!!!!

 

 っていうのが読み終わっての一番の叫びだった。

 

 いよいよ物語も6巻まで進んで、矢代と百目鬼の関係に進展があったかっていえば大いにあったのは間違いないんだけど。

 矢代が百目鬼を追い詰めているようで、実際に本当に精神的に追い詰められていたのは矢代だったわけで。

 ファンブックのインタビューでもそんなようなこと先生言ってらしたけど、矢代をあそこまで追い込んだのは、他の誰でもない。百目鬼だったんだなって。

 全部が全部百目鬼のせいではないと思うけど、百目鬼の行動と言葉で矢代を際限なく本当にギリギリ(よりちょっとオーバーしてる)まで追い込んでいたということに、ようやく百目鬼は気がついたというわけで(しかも描き下ろしで!!!)

 

 百目鬼、ついに巣立ちの時か……。

 

 5巻ラストで雛鳥認定された百目鬼が……と思うと感慨深い。

 

 

 遅めの思春期真っ只中で、矢代のことが好きで好きで仕方なく、さらに持ち前の忠犬根性で「側にいるだけでいい」と言って矢代のあとにくっついていった百目鬼

 想いを返さなくてもいい、ただ側にいさせてくれれば。

 健気だなーと思っていた。

 でも、本当にそれは健気なだけだったんだろうか。

 普通に考えれば、まあ迷惑以外の何物でもないよね笑

 でも、なにしろ相手が矢代だしなーって思ってた。百目鬼もこういう方法でしか近くにいられないって考えた結果の言動ではある。

 百目鬼も自身自分の身勝手さを自覚してるシーンはたくさんあった。

 自分のものにしたい。つなぎとめておきたい。側にいたい。捨てないで欲しい。全部「自分」の感情でそこに矢代の感情は一切考慮されない。

 本当に相手を思うなら、矢代相手であったとしても「相手が求めるもの」をまず優先して考えなきゃいけなかったんじゃないかって。

 

 それが真のスパダリ(っていうか人として当たり前の気遣い)ってもんだろ!!

 と今更いってみる。

 

 とはいえ、恋愛童貞の百目鬼にそんなスパダリ的発想を求めるのは酷だよね。

 けど、考えるまでもなく。

 相手から想いを返されることを期待しない、というのはそれは相手を無視していることと同義なんじゃないかと。

 百目鬼は矢代に「返さなくてもいい」という条件を勝手に自分でつけて想いを無理矢理に押し付けた。

 矢代の「マジなやつは駄目」っていう情報を知ってて、百目鬼的には捨てられないように先手を打ったわけだけど。

 作戦は半分はうまくいって、矢代は押し付けられたそれをその辺に投げ捨てることも、返すこともできず、捨てることもできず、結果どうしていいのかわからないし、「どうにもできない」。

 矢代だって、百目鬼は他とは違う存在だから。

 だからこそ受け取れないし、返すこともできない。でもそれを百目鬼に伝える術がない。

 ただ、本当に心底困ってるし、参ってる。

 

 

 百目鬼も矢代に捨てられるかどうかの瀬戸際で自分の想いを伝えるだけで精一杯。矢代の戸惑いをわかってあげる余裕も経験値もない。

 

 矢代は矢代で自分の混乱を言葉にすることもできず、あげくの果てには自分の中だけで決着をつけてしまう。そこに百目鬼の想いなんて一切介在しない。

 すれ違いとか、お互いのことをわかっていないというよりももっと深刻。

 百目鬼の純粋さがどれほど矢代を追い詰めていったか。

 繋ぎ止めたいと思った百目鬼の予感は正しかったわけで……。

 

 5巻で泣いた矢代に何故?と聞いた時も、百目鬼は当たり前だけど答えが嘘だとわかっていた。違和感はあっても矢代の中の事情はうかがい知ることはできなくて、そこは百目鬼もそれまでもあえて触れようとしてこなかったことだったと思う。

 聞いたらウザがれれるし、これ以上機嫌損ねたくないし。

 どんな扱いされてもただ側にさえいさせてくれればそれでいい、っていうのが百目鬼の考えだから矢代の内面なんてある意味考える必要がなかったわけで。

 百目鬼はちょっとでも引いてしまえば矢代が離れていってしまうことはわかっていて押すことしかできない状況だったっていうのもあるし。

 

 そういう点では、七原とか杉本のほうが変なフィルターや思い込みがない分よく見えてるんだろう。

 七原に言われてからやっっっと百目鬼は矢代がなんで泣いたのか、矢代が百目鬼のことを「どうにもできない」のはなぜなのかを自分なりに理解したようで。

 時として、想いが人を苦しめることを知った百目鬼

 そして、あの決意の表情。

  他人の痛みに思い至ることができた彼はどんな風に変わったのか。

 

 百目鬼のその後については次巻へお預け。

 気になりすぎる……。

 

 

 百目鬼について最後に。

 平田が百目鬼見て「誰だこいつ」って言ってて、あの場面でちょっと笑った。

 けど改めて考えると平田に百目鬼のこと知られてなくてよかったなーーーーーって思った。

  平田が矢代と百目鬼の関係知ってたらあの場で確実に百目鬼は殺されてたんじゃないかな。「誰だこいつ」の間が百目鬼と矢代を救ったよね。ほんと…よかった。

 

 

 

 

 そして、やっっっっと本題に入るけど。

 今回一番言いたかったのは矢代のことなんですよねー……。

 

 徐々に明かされてきた矢代の内面がほぼ解き明かされたといってもいいのかな、と。

 

 追い詰められるところまで追い詰められた矢代はついに自分で『自分』を終わらせるというところにまで至る。

 

 どこで……って思って読んでみたんだけど、ここっていう転換点はないように思えるんだよね。

 

『俺は俺という人間を手放さなきゃならない』って思ってる時は少なくとも終わらそうとは思ってないと思う。

 あえて言うなら、百目鬼が去ってその後の傘を差してるお母さんとカッパ着てる子を見た時、かなーーとなんとなく思っている。

 

 

 矢代の歪みの根源であり、矛盾の正体っていうか。

 百目鬼が去っていって、そしてあの母子を見た時に「何か」を思った矢代。

 

 そうこうしてるうちに百目鬼が帰ってきてしまう。

 

 矢代の混乱と矛盾はどんどん膨らんでいく。

 

 百目鬼に、「人を好きになるのってお前はどんな感じだ?」と聞く矢代。もはやこれ告白なんじゃないかとも思えるセリフだけど、その後さらに「俺にとってはこんな感じ」と以前だったら絶対に言わないようなことを吐露する。

 

「妹はよかったな お前がいて」っていうのも本心。百目鬼はそれ聞いて泣きそうになってたけど、いじめるつもりで言ったんじゃない。

 

 ここでは、矢代はほんとに思ってることだけ語ってる。

 

 その後、矢代は百目鬼を撃ってひとりで行ってしまう。

 

 

 そして、平田との邂逅。

 自分を殺そうとしてる男と対峙して決着つけようというときに、全く他人事のよう。そして平田を挑発して「自分」を終わらせようとする。

 

 死にたいわけじゃない。生きたいとも思ってない。

 

 どっちも本当のことだと思う。

 

 矢代にとっての「生きる」ことは永遠に癒着した矛盾と共に在るということ。

 

 矢代が作り上げてきた「自分」という殻。

 いつ壊れて、いつ終わって、いつから始まったのかも定かでない「自分」

 

『綺麗なものは汚したい』

『大事なものは傷つけたい』

『幸せなものは壊したい』

 

 そうして『擦り切れていく』のは何故なのか。

 

 ずっと、相反する矛盾を内包してそれをうまく飼いならして生きてきた矢代。

 

 痛みを痛みとして感じることもできず、傷ついて涙することもできなくなった。

 

 痛みを快感とすり替えることで「生きること」をやり過ごしてきた。

 でも、痛みは痛みでしかないと思い知らされて、自分の深淵を見た。

 

 もはや痛みと共に生きていくしか術を知らない矢代。

 

 

「 ようやく 俺は 俺を終わらせることができる 」

 

 

 そうして一度『死んだ』矢代が目を開けて、最初に目にしたのは平田に殴りかかる百目鬼の姿だった。

 

 そして、平田に殺されかけている百目鬼をほとんど無意識の状態で助ける矢代。

 そこに、筋道だった思考はない。

 

 死にかけている百目鬼を前に呆然とする矢代が言った

 

「お、まえは 俺を……」

 

 失うのが怖いと言っていた矢代が、撃たれて意識のない百目鬼を見て何を思ったのか。

 

 その後矢代と百目鬼は駆けつけた七原たちに助けられ、あれよあれよいう言う間に、一気に収束。

 まあ、一件落着。

 

 

 え?

 

 

 矢代と百目鬼の関係についてはまっっったく決着はついてないし!!!

 決着つかないどころか、もやもやが、もやもやで、もやもやしている。

 

 

 ここで、一旦矢代と百目鬼の間にあったものはリセット。振り出しに戻った。

 

 矢代の百目鬼のことを覚えてないっていう言い訳はかなり苦しいけど、もうそういう言うしかない。

 

 対百目鬼については不器用すぎてどうしようもないけど、まあ矢代もある意味生まれたての赤ちゃんみたいなもんだし……。

 

 

 けど、対影山との関係はかなり進んだんじゃないかと思う。

 影山への想いをずっと引きずってた矢代だったけど、ポロっと影山に聞いてしまう。

 

「お前は なんで俺じゃなくて久我だったんだ?」

 

 1巻の初めの独白と同じ。

 

 なんで、矢代は影山を好きになったんだろうね。

 人としてどこか欠けている矢代のことを欠けたまま、歪んだままで良しとしてくれた影山。

 矢代を「矢代」のまま認めてくれる影山の側にいるのは楽だったんだと思う。 

 その点では百目鬼とは正反対だと思う。

 

 痛みと共に生きて、もはや痛みと生きることは同義である矢代。痛みを受けいれることでしか生きていけないことの「痛み」。

 

 改めて「漂えど沈まず、されど鳴きもせず」を読み返してみたら、結構6巻とシンクロしててびっくりした。6巻では時がたって更に深刻になってるし、百目鬼に対してもこじれまくってるけど……。

 

 けど、影山への拘りは一山越した感じする。コンタクトケースがなくなったことにはいつ気がつくんだろう。

 

 

 

 そして、最後の最後「飛ぶ鳥は言葉を持たない」について。

 タイトルでうわーーーーーっとなったけど、内容についてちょっとだけ。

 

 百目鬼は矢代の中で「何かではある」と思っていたけど、七原に言われてついに思い至った「お前をどうにもできない」の意味。

 

 百目鬼がどう受け取ったかは、正直はっきりとはわからないけど。

 そこは、一旦置いといて。

 

 ぶっちゃけこれ矢代は百目鬼に好きって告白してるんじゃ?

 矢代に人を好きになるのはどんな感じかって聞かれたときに、あなたは他とは違うってそう言ってほしいのかって聞いて、百目鬼はその後怒ってたけど。

 矢代の「お前をどうにもできない」は、百目鬼は他の人とは違うって言ってるようなもんだよね。

 単純にイコール好きっていう意味の告白ではないし、百目鬼もそういう意味で捉えてるとは思わないけど……うーーーーん。どうなんだろう。

 なんとなく、あの場面読んでて、あー矢代って百目鬼に好きって告白してたんだなって思ってね……。なんか悲しくなっちゃってきちゃってね……。

 

 ともあれ。

 側にいて押すことしかできなかった百目鬼が引くことを覚えたけど、矢代は更に後ろに引っ込んじゃってこれから二人はどうなるんだろう……。

 

 でも、百目鬼はやっぱりまだまだ伸びしろあるなって実感したのできっと大丈夫でしょう。

 

 

 あと読み返してもわかんなかったんだけど、百目鬼撃たれたあと、矢代を殴ったのは誰なんだろう?

 平田っぽいけど、ならなんであの場で矢代を百目鬼をほっといたんだろう。

 特に伏線でもないのかな?

 

 

 というわけで、今回は一旦これで終わり。

 次がーーーー待ち遠しいーーーーーー。

 

 

 

 

囀る鳥は羽ばたかない(6) (H&C Comics ihr HertZシリーズ)