のの子のつぶやき部屋

BLとかBLとかBLとか。少女漫画とか。他にも。ただの萌え語り。基本ネタバレ。

【雑記】【BL】「萌え」という感想は中身が無い?

 先日、友達と話してた時に話題になったこと。

 友人は創作BLやってる人。それで、彼女は読者からの感想で「萌えました!」というのがあまりしっくりこないのだそうで。

 

 彼女のいうようなことは私も感じることがある。

 

 BLにおける萌えって、キャラ萌え、シチュエーション萌え、CP萌えと様々あれど、ストーリー萌えというのは多分存在しない。というか今まで聞いたことがない。

 あの展開萌える、とかはあるけどそれはストーリー自体に萌えているのとはちょっと違う。ストーリーそのものに萌えるという言葉を使うことはあまり適切ではないと感じる。

 自分で「萌える」という言葉を使う場面を考えたのだけど、

 物語全体を評価しようと思った時に、この話は萌えだな、という感想はまず出てこない。

 でも、物語を評価しないときにはこの「萌える」という単語が出てくることに気がついた。正確には読み終わったあとに真っ先に萌えたという感想しか出てこない時、ということ。

 BLにはストーリー性皆無のキャラ重視系とか、ストーリーはあるような気がするけど破綻してるようなのとか、そういうのはよくある。普通なら絶対に面白くないはずなのに、何故か読めてしまう。それはどうしてか。それは中にどっか萌え要素があるから。

 逆にいうと、そういうストーリーがないものは萌えでしか感想をいうことができない。あのキャラが可愛い。あのシチュエーションがよかった。あのセリフがとかそういう場面とか全体の一部を切り取った部分しか評価することができない。

 

 だから、逆に言えば、萌えました!というだけの感想は中身を読んでいないということに等しいのかもしれない。

 友人はその感想を読むと、ストーリーを評価されていないように感じるらしい。友人自身はストーリーで物語を引っ張っていっているタイプなので、そこをあまり見ていない人は逆に何を見て、面白いと思っているのかわからない、とのこと。

 とは言え、作る側の意図を受ける側はどう受け取ろうと自由である。

 読者がどう読もうがそれはそれでいいと思う。

 ただ、BLというカテゴリを主に読む人はストーリーをちゃんと読んでる人って実は少ないのかも、と思った。

 というかストーリーを読むことに慣れてないという人が多いのかもしれない。

 萌えという短期的な刺激で満足できる体質になってしまうと、ストーリーを深く読みこんで考えるというような長期的な思考ができなくなるんじゃないか。

 

 なんでそうなるかっていうと、BL(ここでは商業漫画に限る。ノベルスは読まないので分からない)はそういう長期的な読み方をさせる作品はほぼ無いからだ。

 ストーリー性という言えるようなものがちゃんとある漫画は100冊のうち1冊くらいしか無いと思う。

 というのも、多分出版する側がそういう話を出したくないからだと思う。

 私は業界人じゃないけど、BLの出版方法ってどうにかならないかなーと思ってる。

 

 ストーリーを読めない体質になるのはどうしてかというと、描くほうがストーリーを描いてないからだ。というか商業BL漫画というのは、作者がストーリー性を出せない環境にあるとしか思えない。描かないじゃなく、描けない。

 

 BLというカテゴリ自体、どう考えても大手産業じゃないし、人気が出て大ヒットとなっても一般誌とは雲泥の差があるだろう。

 そういう中でも出版社は本を売らなければならない。

 BLは人気が出たら続刊ってことは多いけど、多分出版する時点では続刊がでるかどうかは決まっていないから。単行本が売れたら続きが出るという方式。

 続くかどうか確実にわからないから、出版されたものは半分終わってるような展開になってる。いつ終わってもいいようにしか描いてない。続くかもしれないけど、そこで終わってしまう可能性もある。だから読後感がスッキリしない。終わったの?終わってないの?という残尿感のようなものがある。

 これなんなのと思う。

 1巻で終わるような短編でも素晴らしい傑作を世にたくさんある。でも名作っていうには綺麗に終わってるものだ。ストーリーを考えるときには明確な終わりが無いと物語の落とし所が作れない。オチがないと話は面白く無い。

 でもBLの人気が出たら続刊、という方式は綺麗な終わりを望めない。続くのかこれ?みたいな曖昧なところで終わらざるをえない。

 だって人気がでたら続き売れるんだもの。完全に終わらせたら続き書きづらくなるし。

 こんな環境で練に練られたストーリーなんてかけるはずない。いつだって物語が続くかは人気次第だ。この作品の使い捨て感。酷いよね。

 固定でファンがいて、ある程度の売上が最初から見込まれている人はちょっとこの制限が緩いかなーってくらいだ。

 

 売上にすぐに繋がるのは当然萌える話だ。1話だけで萌えという刺激を貰える話と、何話かかけても、萌えという萌えもなくストーリーを追わなきゃならない話なら、多分前者が売れるのは当然だ。

 それなら、萌えられてストーリーも面白い話をかけばいいじゃないかとなるが、これを両立させられる作者はそんなにいない。言うほど簡単なことじゃないと思う。

 

 うまい人は絵で魅せたり、絵が下手な人でも演出や話で魅せたりすることが出来る。これは絶対に天然じゃない。意図してこう描こうと思わないと絶対に描けない。

 どういう表現をすれば求める効果が得られるかをちゃんとわかっている人でないと、魅せる漫画は描けない。でもそういう人は多分そんなにいない。

 面白い漫画を意図的に描く、というのは当たり前だけど難しいことだ。

 漫画家の中でも面白い話がかけてさらに人気があるという人は全体から見ると限られてくる。

 

 だから、描けない人は本を売るためには萌え要素に頼るしかない。

 これでさらにダメなのは、萌える漫画は結構売れてしまうのだ。

 ストーリーはほとんどなくても萌えがあれば読者は満足してしまう。私だってそうだ。

 

 BLは絶対にどこかに萌え要素がないと成り立たないジャンルだ。

 でもストーリー自体は萌えという言葉で評価することができない。

 そこで、BLでとことんストーリー性だけと突き詰めるとどうなるか。

 あくまで私の所見だけども、最終的にBLというカテゴリではなくなってしまうという気がするのだ。

 だから、話がきちんと書ける人や書きたい人はBLというジャンルを離れて描くしかない。最近BL漫画家が一般誌に出張するのはそういうことじゃないのかと思う。

 どんなに漫画が上手いひとでもBLというジャンルではストーリーにある話を描くには環境が悪い。

 どんなにいいストーリーを描いても「萌え」に邪魔されてストーリー自体をちゃんと評価されない。それではストーリーをつくる作者はやりがいがないだろう。

 

 志村貴子さんが本格的にBLを描く、となった時にすごく期待した。今の閉じたBLというカテゴリの中で、一般誌がメインの活動場である志村さんはどんな話を描くだろうと期待した。

 けど、志村さんが描いたのはやっぱりBLだった。

 一般誌の志村ワールドでBLを描くかな―と思ったけど、志村さんがBL界に寄せてきた感じ。

 正直ちょっとがっかりした。

 志村貴子でもただの(というにはちょっと変な話だったけど)BLを描くしかないんだなーと。

 えすとえむさんの「このたびは」という非BL作品を読んだ時、余韻が残っていい雰囲気だなーと思って、この人のBLも何作か読んだ。でもBL作品は作者の萌え先行でしかもその萌えがかなり万民受けしない感じだったので、私には合わなかった。なぜ一般誌でかけた雰囲気がBLでは描けないのか。やっぱり萌えが先行してるからだと思う。

 つまり、作者が描く萌えと読者の求める萌えがうまくマッチングしないと作品そのものの評価すらできないという現状がある。(CPやキャラの好みが合わなかったけれど面白いBLというのは稀有だと思う)

 それを踏まえても多くの作品は、作品としての完成度を高めることよりも、作者の萌えを描くことの方が先にあるような気がする。

 

 ただ、最近は萌えとストーリーがうまく両立する漫画が多くなったと思う。読者もジャンルの中で成熟したのかなーという印象。こういうのを読む読者がいないと描けないからね。

 傾向として、ファンタジー物がかけるようになったっていうのはひとつの象徴というか。ファンタジーなんて世界観の説明から始めなきゃならないそりゃめんどく臭いジャンルだ。これを書く人がいて、読む人もいる。すごくいい傾向だと思う。

  これから、一般誌に出て行かなくてもBLできちんと「読ませる」作品が増えるかなと期待している。

 

 昔から、どうして今はトーマの心臓や、風と木の詩、日出ずる処の天子といったような名作に続くような漫画が無いのがと不思議に思っていた。完全に24年組の系譜は途絶えているという印象。

 同性愛がひとつのテーマではあるけれども、あくまで同性愛は作品のなかで使われるツールであって、核ではない。

 こういう風に同性愛と物語が両立する話が現代BLではほとんど存在しない。

 

 非BLなら羅川真里茂ニューヨーク・ニューヨークという名作がある。

 

ニューヨーク・ニューヨーク (1) (白泉社文庫)

ニューヨーク・ニューヨーク (1) (白泉社文庫)

 

  

 でもBLというカテゴリでひとつ作品を挙げるならスメルズライクグリーンスピリットという作品。

 

 

 BL漫画なんだけど、これはもうBLじゃない。

 この作品は高校生の少年の人生の決断の話だ。BL要素はもちろんあるけど、一番読むべきところはそこじゃない。

 同性愛者であること、それによって迫られる決断。そして選択した人生。そういう話。でもちゃんと萌えもある。

 

 こういう作品は一般誌ではBL表現がきつすぎて連載できないし、かといってBL漫画というカテゴリだと萌え先行の人には面白さがうまく伝わらない。

 微妙なラインにある。

 

 でも今こういう話が生まれたことはやっぱりBLもかわってきてるんだろうと思う。

 読み終わった後感動した―と心から思えるBLをもっと読みたい。

 

 

 

 

 と、今までもやもやと思ってたことを吐き出してみた。

 ここまで読んだ人がいるか分からないけれど、これ全部私の妄想なので真に受けないでくださいね笑

 

 はースッキリ(*^^*)