【BL】ヨネダコウ『囀る鳥は羽ばたかない』百目鬼という男
この世に根付かない根無し草のような矢代の唯一になる(予定の)百目鬼くんです。
一見、BL界によくいる無口包容朴念仁キャラのようだが、読んでいくうちにだんだんとそうじゃないことが判明。
ヨネダさんは百目鬼を、矢代ありきのキャラクター、矢代が居てはじめて機能する、と言っている。
ほー、って感じ。
ふーん。へー。そうかー。うんうん。
もう、百目鬼の内面とかそういうのはこの際あんまり気にしない。ものすごく単純なものしかないと思うし。
ようするに矢代を真正面から見て、そのまま受け止められるのは作中では百目鬼だけだってこと。
百目鬼は事あるごとに矢代のことを綺麗だと言うが、本当にその通りなんだろうと思う。
百目鬼から見た矢代は本当にただ優しくて、強くて、綺麗な人。だから惹かれる。
矢代の存在、そのものが百目鬼の心の琴線に触れるんだと思う。
犬はどうして主人に従うのかなんて考えたりしない。それが犬の習性だから。
百目鬼にとって矢代は現時点ではご主人様みたいなものだと。無条件に従うし、守りたいし、離れたくない。そしてたまに髪を触らせて欲しい。そばにいたい、でなくそばにおいて欲しいって思うのが飼い犬百目鬼。
そういうペット体質だから、矢代もそばに置くし、可愛いって思うんじゃないかな。
百目鬼の思ってることはヨネダさんも割りとストレートに表現するから実はすごくわかりやすいキャラ。表面では無口キャラだけど、中身ではゴニョゴニョ思ってて、最後は概ね綺麗だ、で終わるっていう。
それに肝心なところではちゃんと感情が表に出るのも素直でいいです。頬を赤らめたり、耳が赤くなったり
そんな百目鬼視点の『綺麗な頭』シーンが私、すごく好きで。
ヨネダさんってすごく洗練された綺麗な絵を描く人ではないですけど、綺麗な場面の描写はうまいなーと思う。
1巻冒頭でいきなりモノを銜えられる百目鬼ですが、その後の、誰にも言うなよという逆光に透ける矢代の姿。
これ。
百目鬼ビジョンの『綺麗な矢代』
この『綺麗な矢代』を前にした百目鬼にはいきなりフェラする矢代の奇行なんて全然気にならない。百目鬼もかなり変なやつだよね。
でも頭が綺麗だからなんでもいいんです。
そんな憧れの矢代は、他の人にとっては奇人でよくわからないと思われている人。
百目鬼も矢代のことはよくわからないと思っているが、ずーーっと矢代を見つめてる百目鬼は矢代の心の動きを野生の勘で察知する。
百目鬼は矢代と影山の過去は知らないものの、矢代が影山をどう思ってるのかをなんとなく理解したようす。
そして、思うことは。
『どうして分からないんだろう』
もうこの独白が胸にギュンギュンきた。思い悩む犬萌え。
百目鬼だけが矢代のそういう光の部分を見出すことができるということ。
やっぱり憧れが強いっていうか、自分が尊敬するこの人の良さをみんなに理解して欲しいと思う気持ちって下僕根性というか。
普通の恋愛なら、この人の良さがわかるのは自分だけだって思った時って優越感を感じると思うけども、でも百目鬼は腹が立って、苦しい。ホント可愛いなー。
影山や、他の人間には決して見えない百目鬼だけに見える矢代の姿。
それは矢代の本質とは違うかもしれないけれど、百目鬼が見る矢代はそういう人物なんです。
そんな百目鬼を、矢代はどう思ってるのかというと、これはまだよくわからない。
可愛いって思うのも、やっぱりまだペットみたいなもんなのかなーって。
でも、百目鬼自体に関心を寄せてることは確か。
百目鬼にとって矢代のような存在は今までに居なかったように、矢代にとっても、あんな風に矢代の言動を全部真面目に受け取る人ってそれまで居なかった。
驚いたり、狼狽えたりしない矢代も無意識になにか感じてるものはあると思う。
二人の関係の進展が楽しみ。